自社ECサイト『ミヨシ工房』で2023年3月より販売を開始した柄の長いヨーグルトスプーン『SNOPPO』。
今回は、SNOPPOが製品となるまでの開発ストーリーをお話しします。
普通のスプーンだとヨーグルトを容器からすくった時に、持ち手部分にヨーグルトがついてしまい食べる時に手が汚れてしまった…。そんな経験をしたことはないでしょうか。
「カップからヨーグルトをすくったスプーンを使ってそのまま食べたい!」
そんな意見がきっかけで大きなヨーグルトカップでも使いやすい、柄の長いヨーグルトスプーンの開発が始まりました。
当時入社1年目だった新入社員の鍋島が“SNOPPO”のデザインを担当。
まずは社員で意見を出し合い、スプーンを使う人にどのような経験をさせたいのかを書き出したカスタマージャーニーマップを作成。項目や場面に分けて行動や感情を分析するフレームワークを行い、デザインの方向性を探りました。
また、並行してモデルボードを使用しスプーンのシルエットを切り出したモックを製作し、実際のヨーグルトカップを使用して大まかな寸法や形状の検討を行うことに。スタンダードな形状で寸法を比較した後、少しずつ形状を変形させて何度も改良を行い、使いやすさを検討していきました。
▲実際に作成したカスタマージャーニーマップ
▲実際に製作したモック。
カスタマージャーニーマップやモックを参考にヨーグルトスプーンのアイデアシートを作成。計78案の中からいくつかの案をピックアップし深堀、検証を行い、雪国にある積雪量を測るスノーポールをモチーフにしたアイデアを軸にデザインを進めていくこととなったのです。
▲実際に作成したアイデアシート。いくつかのグループに分けアイデアを深堀、検証していきました。
実際にデザインを進めていく中で、デザインで特に苦労したのはすくう部分の形状でした。
最終的なデザイン案として、シンメトリーな形とアシンメトリーな形の2案が残ったのですが、それぞれのメリットデメリットを検討し社内で会議を行った結果、アシンメトリーな形状を深堀していくことに。
アシンメトリーな形はどうしても「使いにくそう…」というイメージがあり、どうやって機能性を持たせつつ、心地いいデザインにするのか。角の丸みが大きすぎても小さすぎても使いにくくなってしまうため、丸みをどのくらいの大きさにするのかが一番のポイントでした。すくうにも食べるのにも使いやすいちょうどいいバランスを探るために、3Dプリンタを使用して様々な形状の試作品を製作し、カップに実際に当ててみたり、実際に手で持ってみたり口に入れ試してみることですくう部分の口当たりや形状、角度などを検証。を検証し何度もモデリングの修正と微調整を繰り返し行い、現在のスプーンの形状が完成したのでした。
ヨーグルトから雪を連想し、スプーンをスノーポールに見立ててデザインを行った“SNOPPO”。スノーポールの特徴的な縞模様はテクスチャで表現しており、持つときのグリップ としての役割も果たしています。通常、スプーンの柄の部分と言えば平たいことが多いですが、このスプーンは柄の部分が棒のように丸くなっているのも特徴の一つ。このスノーポールをイメージしたデザインが持ちやすさに繋がっています。
”SNOPPO”というネーミングは、社内で意見を出し合い会議を行い決定しました。
30個近いのネーミング案が出た中で、デザインのコンセプトだったスノーポール+特徴的な柄の長さ(ノッポ)を組み合わせた”SNOPPO”というネーミングに決定したのでした。
デザインを決定後、早速金型の製作に取り掛かりました。 1回目に製作した金型は、金型の凸側と凹側で製品形状の位置が少しだけずれてしまっていたため、ずれた部分にバリという成形不良が大きく発生してしまいました。この問題を解消すべく、一度は出来上がった金型を一から作り直すことに。2回目の金型製作では、より精度が出る機械で加工を行ったことで無事にバリも解消され、無事に金型が完成したのでした。
▲加工中の様子
▲完成した金型
自社で金型製作から成形まで対応できるからこそ、SNOPPOは様々な材料での成形を行いました。一般的なプラスチックであるPPから、お米由来のプラスチック、近年注目されている樹脂のトライタンなど…。時には材料開発メーカーの試作材を使ってトライ成形を行ったことも。素材ごとの口当たりの違いを試すこともでき、新しい発見もありました。
こうして製作したSNOPPOは、その年に開催されたオープンファクトリーイベント「かつしかライブファクトリー」での成形体験のワークショップにも使用。参加者の方からは後日「すごく使いやすかった」「ヨーグルト以外にもいろいろなところで使っている」と大好評をいただき、製品化を目指して展示会などにも出展。その後、弊社ECサイト「ミヨシ工房」で試験的に販売を開始しました。
左右非対称の形状だったため、実は右利きの方向けだったSNOPPO。
「左利き用もほしい!」というお声を多くいただいていたことから、すくう部分のわずかな凹凸を解消するために行った試験販売後の3回目の金型製作のタイミングで、形状はそのままに向きを逆にした左利き用のSNOPPOも併せて製作することに。こうして、製作当初からこだわっていたすくいやすさや、すくう部分の口当たりの良さはそのままに向きを逆にすることで、左手で持った時でも使いやすい左利き用のSNOPPOが完成しました。利き手に合わせて選ぶことで、どのお客様でも使いやすいヨーグルトスプーンとなっています。
▲右利き用と左利き用のSNOPPO。形状はそのままに向きを逆にすることで利き手に合わせて使うことができます。